4月
2014年4月4日
昨夜たいへん美味しい鍋を食いながらジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』のあとに続けて見たジム・ジャームッシュの『リミッツ・オブ・コントロール』はやけに心地がよくて、映画館で見たときは大部分をうとうとして過ごしてしまい、今回も最後の方で少し意識が飛びかけていたけれど、全体を通してやけに心地がよくて、それはなんだったのだろうと考えみると、一応の筋書きとしては殺し屋が指令を受けて人を殺しに行くというお話になるけれども、それにとらわれずに画面を見てみれば、なんのことはない、ヴァケーションの映画じゃないか、ということなんじゃないかと今日たいへん忙しくていつものように朦朧としながら労働しながらはたと気がついたのだった。殺し屋であるところの男はスペインのあれはバルセロナなのかしら、におもむき、変な形のマンションに滞在し、連日美術館に行き、毎日決まったようにカフェに行き、座っていると人が来て少しいい話をしてくれてそれに耳を傾け、快適な列車で移動し、仮庵に泊まり、フラメンコを堪能し、またカフェに行き、カフェに行き、カフェに行き。アメリカから来たギャングなの?と好奇の目を向ける子どもたちに問われたときにノーと言うが、それは本当にノーなのであり、ギャングじゃなくてサイトシーイングですよ、というのが正答だ。としか思えないほど、男の行程は穏やかで、安らぎに満ちているように見える。この映画はそういう気分で見ればいいんじゃないかな、とたいへん忙しくていつものように朦朧としながら労働しながら私はそれに思い至ったのだった。
今日も今日とて、夜は店を閉めた。
啓蟄という言葉を知ったのは去年のことだったと思うけれども、まさに、という具合で春になって一気に忙しくなり、花見時期のこの一週間というのはゴールデン・ウィークにも負けないぐらいのバカみたいな忙しさに見舞われるため、あ、無理です、となってギブアップする、そんな日々だ。がんばれないほどはがんばらない、という方向を、今になって。春になった。今日は半袖で過ごした。時間貧乏であるがゆえか、金というよりは時間がもったいなくてここのところ千円カットを利用している。一時間も一時間半も美容院にいるよりも、十分十五分で済むこちらの方が性に合っているのかもしれないしどうせ髪型にこだわりなどないのだから、そもそもそうするべきだったのかもしれないと今になって。昨日はじゃあ8mmでと言ってただの坊主にしてもらった。お互いに簡単そうだった
ここ一ヶ月ぐらいで見た映画。
リミッツ・オブ・コントロール(ジム・ジャームッシュ)
ゾンビ(ジョージ・A・ロメロ)
コンボイ(サム・ペキンパー)
スプリング・ブレイカーズ(ハーモニー・コリン)
偽りなき者(トマス・ヴィンターベア)
悪徳(ロバート・アルドリッチ)
ハタリ!(ハワード・ホークス)
親密さ(濱口竜介)@オーディトリウム渋谷
永遠に君を愛す(濱口竜介)@オーディトリウム渋谷
天の許し給うものすべて(ダグラス・サーク)
アメリカン・ハッスル(デヴィッド・O・ラッセル)@TOHO岡南
なみのこえ 気仙沼(濱口竜介、酒井耕)@moyau
なみのおと(濱口竜介、酒井耕)@moyau
『親密さ』を見に行ったのは三月半ばの金曜日のことで、その日は6時ぐらいに店を上がらせてもらい、7時半ぐらいの新幹線に乗り渋谷へ向かい、少しだけ時間があったのでスタバで本を読み、12時からのオールナイトを見、6時半ぐらいの新幹線に乗って岡山に帰って土曜日の営業をしたのだった。むちゃくちゃなスケジュールだったし土曜日の営業はしんどかったけれども、それだけのことをする甲斐のある時間だったし、多くのことはここでは書かないし、見る前に読んでもまったく問題ないんじゃないこれはということは店の方に書いたのだけど、やっぱりこの映画は私にとってはあまりにアクチュアルだった。ストラグル、という言葉がずっと頭の中で回っている。ストラグルグルグルという状態だ。どれだけの人が今度の上映を見に来てくれるだろうか。そしてどれだけの人に響くのだろうか。全然わからないし、いろいろと不安だ。
今日も今日とて店を閉めて、6時に、7時半にやっと昼飯を食い、二人で11時過ぎまで延々と仕込をしていた。昨日休みだったのに、今日の時点ですでに体が重くて金を数える腕すら重い。ビールの小瓶を2本飲んだらやたらに酔っ払って、3本目の今は何がなんだかわからない。本を読んだ。ボラーニョの『鼻持ちならないガウチョ』とゼーバルトの『鄙の宿』をここ数日で読み終えた。3月もなんとかノルマ的に思っている5冊を読了して、これでこの3ヶ月は毎月ちょうど5冊ずつという、なんとも言えないアジャストな感じであるのだけど、3月に関しては岡田利規2冊とボラーニョはともに200ページに満たないものなので、なんというか別に狙ったわけじゃないにしてもこすい感じのアジャストな感じになっている気がしてならない。大長編にでも挑もうか。次に何を読もうか、まるで何も浮かばない。
人生。人生。人生。人生。よだれみたいになってビールが口の端からこぼれていった。雨降ってる。増税。