デイヴィッド・ゴードン/二流小説家
2012年8月21日
二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)読んだのはいくらか前で、彼女が買った本だったのでページを折っていないのでどの箇所が面白かったのか今は判然としないのだけど数日であっという間に、ちょっと時間があけば本を取り出しページを繰り、という感じで読破したのでたいそう面白かったという記憶だけが残っている。
ポルノやSFやヴァンパイアものを書いている主人公が監獄の死刑囚に乞われ伝記を書くことになって、当然新たに起きる事件に巻き込まれて、いくつもの美女が現れてその中のどれかとファックして、あれやこれやが起きてそれやに至るいたってまっとうなミステリーで、途中途中に挟まれる主人公が書いた小説の抜粋とかはけっこうどうでもいいなと思うのだけど、だいぶ残虐な殺人事件を起こした死刑囚のダリアン・クレイや、あるいは主人公の家庭教師としての教え子であり作家としてのエージェントみたいな存在になっている大富豪の娘の高校生のクレアや弁護士、弁護士秘書等の登場人物の、ほとんど紋切り型ではあるけれど航しがたく持つ魅力や、『多重人格探偵サイコ』に出てきそうなかなりの残虐描写が読んでいてとても面白かった。
こういうジャンルものが、ロラン・バルトやボルヘスの名前を挙げる作者によって書かれると、いたって単純だけど私はどうもそれだけで信用してみていいかなと思ってしまうらしく(伊藤計劃のときもそれを思った)、そういう素養というか読書背景を持つ人が、いわゆる文学みたいな隘路に入り込まないで伸び伸びとミステリーやそういったなにかを書いていくことをなんというか、積極的な肯定の中で受け止めたい。