トゥルー・ロマンス(トニー・スコット、1993年、アメリカ)
2013年1月21日
年末に『アンストッパブル』を見た時に、これでトニー・スコットの映画が終わってしまうなんて、とか書いていたのだけど、考えてみたら『エネミー・オブ・アメリカ』以前の作品はどれも見たことがなくて、それらを全部見終えて初めて「これで終わりだなんて」と言えるんじゃないか、と思ってちょっとずつ見ていくことにして、まずはこれを見た。
どれもこれも抜群に面白い映画を撮る人だとは思いながらもトニー・スコットの作家性というものについては私は実はよくわかっていなくて、今回『トゥルー・ロマンス』を見てもどのあたりがトニー・スコット印なのかはやっぱりわからない。タランティーノの脚本ということもあり、ほとんどタランティーノ映画を見ているような感覚だった。そしてそれは、やはり抜群に面白かった。
コールガールの仕事としてクラレンスとファックしたあとに一人バルコニーで涙するアラバマの横顔とちらつくネオンの明かり。前景をひっきりなしに列車が通り過ぎていく奥でおこなわれるパパとの別れ、アラバマとパパのキス。死を前にしたデニス・ホッパーがくりだすゲスなジョーク、そこで起こる、悪い予感しか与えてこない哄笑。クリストファー・ウォーケンのこわばった笑顔。マフィアの男に痛めつけられ、真っ赤な血を流しながら中指を立てて抵抗するアラバマの振りきれっぷり。タランティーノらしい、パズルがすべて拳銃で埋め尽くされましたよというクライマックス。どれも本当に素晴らしかった。
そして何よりハッピーエンドなのがいい。冒頭とラストで流れるアラバマのモノローグがまた素晴らしい。いい声で、とてもいいトーン。ユーアーソークール。本当に。